“アメリカの一部の建物は、日本の建物の影響を強く受けています。その例の一つに、耐震性の考え方があります。アメリカは日本と異なり、地震の少ない場所ですがそれでも過去には何度か大きな地震が起こっています。代表的なのは、1906年に起きたサンフランシスコ地震です。マグニチュード7.9の大きな地震でしたが、この時はサンフランシスコの街が燃えて多くの死者が出ました。それ以外にも2004年にはパークフィールド地震が発生するなど定期的に揺れている国です。
もともとアメリカの建物は、日本の建物と異なり耐震性はあまり考えられていません。そこで、日本の建物を参考にして耐震性の高い建物を建築する業者が増えてきました。その時参考にしたのが、日本の東大寺の造りになります。東大寺は、過去に何度か大きな地震を経験しながら1300年近く崩れずに現在の状態を保っています。メンテナンスなどはしていますが、それでも当時の設計が今なお生きているため、耐震性を強化する時の研究対象になりえるでしょう。東大寺は、ほかの建物と異なり真ん中に大きな丸太がぶら下がっているのが特徴です。そのぶら下がっている丸太はどこに接することもなくただぶら下がっているだけです。実は地震が起きた時に、この丸太があるおかげで建物のバランスを保つことができ、倒壊しないような造りになっています。
そしてもう一つ注目するべきは、東大寺の建築物には全く釘が使われていないことです。釘を使わず木と木を組み合わせて差し込む形で組み立てているため、大きな地震が起きた時も揺れをうまく吸収するようになっています。このような造りは、日本国内の建物でも応用されていますが、アメリカの地震が多い地域の建物でも応用されるに至りました。
もう一つ影響を与えているのは、日本の従来工法と呼ばれる建築工法です。日本の住宅の多くは、間口が広くなっている設計を採用しています。一方でアメリカの住宅は、間口は広くありません。そこで、日本の建築工法をまねて間口を広くするようにしています。間口を広くすることによって得られるメリットは、まず風通しが良くなることです。特に、建物と建物が近くにある場合には風通しがとても重要になるでしょう。
もう一つのメリットは、間口を広げることでリフォームをしやすくすることです。この時、間取りを変更するレベルでリフォームを行うことが可能になります。結果的に、築年数がある程度経過した住宅でも新築住宅のように新しくしやすいです。”