世界的にも有名な日本人建築家の中で一番に挙げられるのが、丹下健三です。優秀な日本人建築家として国外でも活躍し、世界的に一流建築家と認知されました。丹下健三は、日本が代2次世界大戦の敗戦から復活する戦後復興期から高度経済成長期に数多くの国家的プロジェクトに参加したことでも知られています。
丹下健三は1913(大正2)年に大阪府堺市に生まれ、銀行員である父とともに中国にわたり幼少期をすごしました。その後上海の日本人学校に入学し、日本に帰国後は愛媛県今治市の尋常小学校と旧制中学校、旧制広島高校へ進学して次第に建築家を志望するようになりました。そして東京帝国大学(現在の東京大学)工学部建築科に入学しさらに大学院にまで進みます。終戦を迎えた直後に大学院を修了し助教授に就任した後は、自身の研究室を作り多くの建築物を手掛けるようになりました。1954年に愛媛県民館で日本建築学会作品賞を受賞してからは、多くの建築物で受賞を重ねる実績を積み上げてきました。
そのような中で特に有名な建築物と言えるのが、1964年の東京オリンピックのメイン会場となった国立代々木競技場です。国立代々木競技場は、丹下健三の代表的な建造物として広く知られ、その独創的な外観の美しさはまさに近代建築の傑作とも言えるでしょう。先進的な技術が数多く投入されたことも国立代々木競技場の特徴で、内部に柱を持たない構造や油圧ダンパーによる屋根の振動を抑える工法が採用されています。後に日本の近代建築20選にも選定され、現在も現役のスポーツ施設に活用されています。
1970年に大阪府吹田市で開催された日本万国博覧会のシンボルゾーンに設置された「大屋根」も、丹下健三デザインの建造物の一つとして知られており、ボールジョイントとパイプフレームを多用したトラス構造の巨大な屋根は来場者に大きなインパクトを与えました。日本万国博覧会の終了後にしばらく保存され、1978年に解体されているものの、現在も残されている「太陽の塔」とエスカレーターで連結されていたことでも有名です。 丹下健三はその後も様々な業績と作品を残し、日本建築界が世界の建築の中でも傑出した地位を築いたとも言われました。堂々とした佇まいが印象的な東京都庁舎や、特徴的な外観の山梨文化会館も丹下健三の代表作であり、広く知られています。後進の世界的な建築家(黒川紀章・磯崎新など)の育成にも携わり、2005年に亡くなるまで建築界の巨匠として名声を馳せました。