隈研吾は日本を代表する建築家・デザイナーです。建築作品には木材を使用した和のテイストのものが多くあります。初期はポストモダン建築のビルを手掛けていましたが、高知県の木造芝居小屋である「ゆすはら座」の修復・移転に関わったことをきっかけに、木をはじめとした自然素材を使用した建築を多く発表するように変わっていったといいます。梼原・木橋ミュージアムの芸術選奨文部科学大臣賞や根津美術館の毎日芸術賞など数々の受賞歴をもつ建築家です。
最近では2020年に予定されていた、東京オリンピック・パラリンピックの主な会場として建設された「新国立競技場」の設計をおこないました。隈研吾は建築家を志したのには、1964年に開催された東京オリンピックで水泳競技の会場となった国立競技場を見たことがきっかけであったとのことです。2016年の12月に着工され、2019年の11月に竣工した新国立競技場は「杜のスタジアム」とも呼ばれています。木材と鉄骨が組み合わされたデザインで、周辺の環境とも調和するスタジアムとなっています。国内の47都道府県で産出された杉を使用しているのが特徴で、それぞれの産地に合った方向に並べられているといったこだわりがある建物です。庇は京都の法隆寺にある五重塔にインスパイアされたもので、伝統的な建築技術を取り入れたものとなっています。
その他にも有名な建築作品は数多くありますが、その1つには京王電鉄の高尾山口駅の駅舎が挙げられます。2015年の4月に改築が終わったこの駅舎は東京で最も有名な山・高尾山を訪れる人に利用されることが多いもので、大胆な木造の屋根が特徴的です。内装や外装には高尾山にも多く生えている杉材を多く使用していて、日本に古くから伝わる木組みの技法を用いているのが特徴です。
下町の観光地として国内外から多くの人が訪れている浅草にある浅草文化観光センターの建物も隈研吾の建築によるもので、木造住宅を重ねたような独特な外観の建物となっています。外観はガラスと木材が印象的なデザインで、平屋の住宅を積み上げたような個性的な外観です。和のテイストがありながら、現代的でモダンな建築となっています。
海外にもいくつもの建物を建築していますが、その代表的なものにはスコットランドにあるヴィクトリア&アルバート博物館の別館や、スイス連邦工科大学のローザンヌ校キャンパスにある「ArtLab」などが挙げられます。