建築知識を学ぶ上で世界建築史の学習は必須ですが、そのなかでもギリシア建築は欠かせません。ギリシアの建築デザインには、重厚なイメージで飾り気のないドーリア式・柱頭に羊の角のような飾りがあるイオニア式・柱頭に華美な装飾がついたコリント式がありますが、それぞれに特徴が存在しています。
まずドーリア式は、古代ギリシア建築前期である紀元前6世紀から5世紀に誕生し、柱基や鉢形装飾を持たないため、「荘重」とも表現されます。もともとは木造建築の様式を起源としており、トリグリフは木造建築の梁の木口がそのまま使われています。代表的建造物としては、バチカン市国のサン・ピエトロ広場やアテネのパルテノン神殿、ワシントンD.C.のリンカーン記念堂などが挙げられます。またローマ時代の代表的建築であるコロッセウムも、第1層はドーリア式の柱となっています。そしてイオニア式は、組になった渦巻き飾りがある柱頭が大きな特徴です。この渦巻き飾りは、最初は平面的でしたが、最終的には隅部が突出する形となったため、前面と側面のどちらから見ても同じ形状に見えます。エンタブラチュアは、飾りのない帯に分かれているアーキトレーブと豊かな彫刻が施されたフリーズ、歯飾りが設けられているコーニスという3つの部分から構成されています。イオニア式による最初の大神殿はサモス島のヘラ神殿ですが、地震や水害で崩壊してしまったため現存していません。同じくイオニア式で建てられたエフェソスのアルテミス神殿は、古典古代における世界の七不思議の一つに数えられています。同様に、ローマのコロッセウムの第2層の柱にも見られます。最後にコリント式は、アカンサスの葉がかたどられた装飾的な柱頭と、溝が彫られた細い柱身が特徴です。そのため、「華麗」や「繊細」などと称されています。ギリシア起源の建築様式で、古代ギリシアの都市国家であるコリントスに由来しますが、ギリシア建築に用いられた例はほとんどありません。隅部の渦巻き飾りという共通点がありますが、イオニア式やドーリア式と異なり柱頭の下部にくびれがなく、環状の玉縁の帯が底部を形作っています。代表的建造物としては、ローマのパンテオンが挙げられます。他にもローマ時代のコロッセウムの第3層はコリント式の柱ですし、アテネのゼウス神殿にもコリント式の柱が用いられています。このように3つの様式には、それぞれに特徴と歴史があります。したがって古代ギリシア建築を学ぶことは、建築の学習の第一歩であるともいえます。